2014年度の大学受験生は2008年に改定された新しい学習指導要領による教育を受けた世代として初めての大学受験となりました。学習内容が縮小傾向にあった「ゆとり教育」から一転、内容・授業数を増加させたいわゆる「脱ゆとり教育」と呼ばれる新学習指導要領は、その成果の行方が大きく注目されています。
ゆとり教育の流れ
「ゆとり教育」の始まりは1980年に遡ります。70年代の日本の学校教育は濃密な学習指導要領の元に行われており、そのカリキュラムの過密さから「詰め込み教育」と批判が挙がっていました。それを受け、1980年の学習指導要領改正から徐々に学習内容・授業時間が削減され、1992年には第2土曜日の休日化が行われました。そして2002年、学習内容及び授業時間の大幅削減・完全土曜休の実施を盛り込んだ、現在「ゆとり教育」と呼ばれる教育体制がスタートしたのです。人間的な「生きる力」の育成を目標に掲げ、「ゆとり」を重視したこの方針は、しかし、徐々に根本的な学力の低下に繋がっているという指摘・批判を受けることとなりました。
ゆとり教育を受けた子どもが対象となった、2006年の経済協力開発機構(OECD)による【生徒の学習到達度調査[Programme for International Student Assessment、PISA]】において、日本はゆとり教育開始前の2000年から全分野で順位を下げていたことも、学力低下の根拠の一つとして用いられたのです。
「脱ゆとり教育」へ
こうした状況の中、2007年に「教育再生」が謳われ、ゆとり教育の見直しが行われました。そして2008年に学習指導要領改正され、2011年から「詰め込み」でも「ゆとり」でもない、新たな学校教育が始まったのです。学習内容の追加・変更と授業時間の増加が盛り込まれ、小学校では278時間、中学校で105時間の授業時間増加となりました。これに伴い、土曜授業の復活も検討されています。また理数教育の充実や語学教育重視の方針も明確になっており、小学校高学年に英語活動の義務付けがなされました。
しかし授業時間の増加は「詰め込み教育」への回帰ではないかという指摘や、子ども間の学力の格差が広がるのではという心配の声も挙がっています。「ゆとり」から「脱ゆとり」の過渡期である現在、「脱ゆとり教育」に評価を下すことは早計ですが、同時に問題点も一つ一つ検証しなければなりません。日本の将来を担う子どもたちの学力は社会的に大きな課題の一つであり、今後の推移に注目が集まっています。
【関連サイト】
・[学習指導要領]文部科学省
・[OECD生徒の学習到達度調査(PISA)]国立教育政策研究所