現代日本のファーストフードといえば、「牛丼」と「ハンバーガー」が代表格でしょうか。しかし2014年、この二つの業界に激震が走りました。大手牛丼チェーン「すき家」の人手不足騒動と、世界的ハンバーガーチェーン「マクドナルド」の大規模な客離れです。
内から、外から。外食産業を襲った危機
すき家の危機は内側から訪れました。2014年春、すき家店員の大部分を占めるパート・アルバイト従業員に退職者が続出。店舗運営の人材が足りず、一部の店舗では営業時間の短縮や一時閉店を余儀なくされたのです。その背景には、以前から指摘されていた人件費削減を狙ってのワンオペレーション(一人勤務体制)による店員への過剰な負担や、それによる防犯体制の薄さから社会問題にもなる程に頻発した深夜強盗問題が存在しました。さらに仕込みに大きな負担のかかる新メニュー導入が最後の引き金となり、大量の人離れを起したのです。
一方のマクドナルドを襲った危機は外側、つまり顧客離れによるものでした。2014年7月に、商品に消費期限切れの鶏肉が使用された恐れがあるとされた問題で、当時の日本マクドナルド社長の対応の遅れ・不備が大きな批判を受けました。更に2014年末から相次いだ異物混入事件でも、消費者側への説明が遅かったマクドナルド側の対応が不誠実だと指摘されました。外食産業の縮小、コンビニ各社との競合などによって徐々に客足が遠のいていたマクドナルドは、2014年の騒動で一気にその信頼性を落とし、客離れと大幅な売り上げ減という打撃を受けることとなったのです。
個性で勝負のファミレス
打撃を受けたファーストフード業界と対照的に、ファミリーレストラン業界は堅調な成績を維持しています。鍵となるのは、家庭では調理しづらい食材や持ち帰りの難しいメニューの提供です。家庭料理と被らず、またコンビニやファーストフードとも異なる路線を狙うことで、外食ならではの魅力を手頃な価格で提供するという戦略をとっているのです。
ファミリーレストラン各社の平均客単価は前年比2ポイント上昇、売上高も3ポイント上昇と、いずれも前年を上回りました。しかし客数を見ると全体の伸びは僅か0.3ポイント。提供分野によってはややマイナスに転じたファミレスもあり、予断を許さない状況です。2014年度後半からは消費税増税の影響が徐々に出てきているという分析もあり、2015年の動向に注目が集まります。
外食産業は1990年代後半をピークに縮小傾向が続いています。2000年代に強さを見せていたファーストフード業界も、前述の通り大手が大打撃を受け、立て直しには時間がかかるとされています。各社の2015年の動向を注視していきたいですね。